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アラ・プリマで油絵の描き方

作品情報
油絵で全行程は5時間、スポットライトを使わずに出来るだけ自然光に近くなるように窓から入ってくる光と高い天井の蛍光灯だけ、その結果大変柔らかな光の中での人物画となります。
今回紹介するのはアラ・プリマ(ウエット・オン・ウエット)という技法で、油絵が乾かないうちに1日で一気に仕上げていく技法です。
サイズは30インチx24インチ(76cm x 61cm)日本で言う20号Fに近いと思います。


この日は朝9時に皆で集まるということだったので、前日に一応キャンバスの下塗りだけはしておきました。
セッションは基本的に25分ずつ、5分の休憩を挟んでまたポーズということになっています。

ステップ1 下塗り 白に少しだけバーントアンバーを混ぜたものを塗っていきます。この作業は前の日にごく薄く塗ったので、当日はある程度乾いていました。アラ・プリマだからこれも当日すべきだろうという意見も有りますが、まあ、下地が塗ってあると多少なりとも作業が楽にはなります。

ステップ2 線描き 最初のセッションでまず丁寧に線引きをしていきます、まずはバーントシェンナと白を混ぜた色で線を引いていきます。
ここではとにかく薄く細く丁寧に描いていきましょう。
ここではドローイング(デッサン)の技術が大変大切になってきます。
一応具象画を描こうという気持ちが有ればデッサン力は必ず必要です。ドローイング(デッサン)の技術についてはまた別の機会に丁寧に解説しますからここではごく簡単に、、、
まず大体の構図を決めて、キャンバスの中にいれる人物のサイズを決めていきます。
実はこのとき私は一度、横描きにしようとキャンバスを横にして、描き始めたのですが、途中で気持ちが変わりキャンバスをひっくり返してまた描き直しました。
このとき線描きの色はやっと見えるくらいの薄い色でアタリをつけて、描き加えながらだんだん濃い色にしていく。
油彩での大切な事はいくらでも描き直せるので、その利点を最高に利用するという事です。
私の線描きをみれば、足の長さで描き直したのがわかると思います。

ステップ3 色の濃い部分から塗っていく。
まず首の後ろの髪の部分と肘の下にほとんど黒(バーントシェンナに黒を混ぜたもの)を塗ります。
これは次に塗る肌の暗い部分の色見を出来るだけ間違いのない色にするためです。
とにかく人間の目とはだまされやすい物ですから、一色づつ出来るだけ確実な色を塗っていきましょう。
暗い部分の肌色は先ほどのバーントシェンナに黒を混ぜた色から作ります。
こればかりは光の種類、モデルの人種などで大きく作用されるので、じっくりと色を混ぜて気に入る色を作ってください。
私はこの日はバーントシェンナ8割にイエローオーカー1割、黒、少しのオレンジを混ぜて作りました。この色は必要以上に作ってください、後々この色から明るい色を作っていきますから。
この色で眉や目のアタリ腕の下の部分、顎、手、足の輪郭等を描きます、とにかく肌色の中で一番暗い部分を描く訳です。
この見本写真はさらに次の少しだけ明るい色(先ほどの色にオレンジと白を足したもの)も塗っています。

ステップ4 肌色を全部塗る。さらに明るい部分を先ほどより微妙に明るい色で塗る。また最後の明るい色を白とオレンジ(肌の色によって配合は変える)を加えて作り塗る。
ここでは肌色を4色に分解していると言う事を理解してください。
そして暗い部分から塗っていくという事、最初に塗った下地の色は明るめの肌色より彩度を下げた物だったという事に気づいてくれれば大正解です。

ここでパレットについて説明します。
油絵(特にアラ・プリマ)においてパレットの使い方は大変重要です、そこがその日の作業台になる訳です。
きちんと整理しておかないと後半とても作業が面倒になっていきます。
同じ色はいつも同じ場所で混ぜるし、似た色はすぐ横で作っていくようにしてください。
パレットが大きければ作業は楽になりますが大きければ良いという物でもありません。
ステップ5 バックグラウンドの色を塗り始める。モデルの後ろに濃いめのえんじ色の布がかかっていたのでアリザリン・クリムソンに他の色を多少混ぜながら塗りました。
またそのあと髪の毛もその色に黒を加えながら塗る、同時にその色で目も少し加える、このとき決して黒目の部分などを気にせず、まぶたによって出来る陰等を描くような感じで。絵が締まってきましたね。
ステップ6 バックグランドを塗っていきながら床の色、衣装、この日は中東の踊り子の様な衣装だったので、その色も塗る。
カウチの足下に有るのはモデルが飲んでいたコーヒーです(笑)、カウチの色や床の色は衣装やバックグランドに比べかなり淡い色だったので、実際の物とは変える事としました,カウチはイエローオーカーを中心に、床は白かったのですが板張りのような色に変えました。
ステップ7 ここで一応すべての部分に色を塗り終えました。ただ単に色を塗るのではなく,それぞれに中心の色を塗った所で、明るい部分、暗い部分と3色にわけて塗っています。
つまり、この状況で、一番暗い部分の色、肌色を4色、それぞれの物(カウチやクッションその他)を3色で、全体に色を入れます。
ここまでで大切なのは、アラ・プリマですから溶き油を入れすぎない事、色を慎重に混ぜて、きちんと塗っていかないと乾くまで待たないと大きな色の変更が出来ないという事。


ここで、描き始めて3時間が終了、お昼休憩が1時間。
近所のピザ屋まで歩いていく途中、ユニバーサルスタジオの看板を発見、3Dになっていて思わず写真を撮りました。
ランチはピザ屋のサンドイッチ。

休憩はしっかり取る事を勧めます、絵画とはやはり肉体労働と頭脳労働のミックスですから、ある程度作業をしたらきちんと休まないといい加減な仕事になってしまいます。
特に後半になるにしたがって、精神力が必要になります。
いい加減な仕事にならないように最後まで自分のテンションを維持しましょう、最近そのための休憩は本当に大切だと思うようになってきました。
ステップ8 肌のブレンド、モデルを注意深く観察しながら4色にわけていた色をブレンドしていく、先ほど作った4色の肌色の間の色や、場所によってさらに色を加えながら作った色でブレンドしていく。
絵画として魅力を出すために実際のモデルの肌色より少し鮮やかな色目で塗っていきます。さらにハイライトの一つ手前の色まで入れます、ハイライト(反射光で最も明るい部分)はとにかく我慢ですね、ここまで来ると塗りたくなるのですが、大切なのは全体の立体感、奥行き等ですからね。

ここで白人の肌色についてちょっと、、、白人と言っても実は相当色の幅が有ります。
日本でよく見る有名人で言えば日産のゴーン社長等は白人と言っても、生まれも中東ですから暗い色になってきますし、ロシア系のモデル等は本当に白いですよね。
ちなみにロスでは胸元や肩から腕が日に焼けているので色が濃くなる事が多いです、特に肘から下は出している事が多いので、かなり焼けてますね。
また、日焼けとは別に体の部分ごとにも色が違います、まずは女性の頬は化粧のせいでもありますが少しピンクが入ってますし、鼻の頭や耳も赤くなりがちです、逆に目の回りは赤みが消えます、後は指先や膝等も赤くなります、これら赤みが強い所は毛細血管が多いか皮膚が薄いかで肌の下の血の色が出てるという事でしょう。
モデルの観察だけでなくこういう事も理解しておくと、より作画が楽になります。
ステップ9 肌色を整えながら、ディテールを加えていく。またこの時点でコーヒー飲み終えていたのでコーヒーカップが無くなっている事に気づくと同時に絵の全体のバランスからモデルの顔にポイントを持って行くためカウチのエッジをぼかし始める。
ステップ10 後1時間を切った所で、全体をよく見てみると足がまだ大きな事に気づき、小さくしながらも顔の写実に対応させるために足も含めて上半身以外の部分を抽象化してみる。
この効果が、以外に気に入ったのでこのまま画面下やその他も筆のタッチを活かした殴り描きのような仕上げとしました。

最後に顔のアップ、あまり小さな筆は使わず、ディテイルにこだわらずに、シャープなエッジ等はハイライトのみです。
たとえモデルに似ていなくてもあまり気にしないでください、もっと大切な物を優先しましょう。
この作品の場合は人物の存在感、環境、空気のような物です、その上でカウチに座った女性がちょっと物憂げと言うかアンニュイな感じが出ていれば成功なんですが、、、、

以上5時間でのアラ・プリマでした。

セッションが終わった後、モデルがおもしろがって自分も絵を描いている風に写真に撮ってくれと筆を持ってのポーズ(笑)

画家の言葉:

絵を描くというのは大変個人的な事でもあるので、ここに書かれているような事を守る必要は全く有りません。
ただ同時にある程度の技術やコツを身につければ画風に幅が広がり、そうでなかった頃に比べ、筆や絵の具をコントロールしている自分を感じることができ、よりいっそう絵画の楽しさが見えてくるとも思います。
今回はまず線引きをしてそれを元に塗り込んでいくという手法をとりましたが、他にもいくつもメソッドは有ります、他の技法やデッサンについてもまた日を改めて説明をしていきたいと思います。

上に書いた情報が少しでも皆さんの絵画の助けになれば幸いです。

また次回日本に帰国した時にでも、場所とモデル(プロでなくても結構です)をご用意いただければドローイング(デッサン)のデモンストレーションでしたら喜んでお引き受けしますのでご遠慮なくお問い合わせください。

同時に絵を勉強している人からの質問を受け付けています。 初歩的な事でもどんな事でも遠慮なくどうぞ。

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Keep Painting!
Nobu Haihara